サンゴ辞典【ショウガサンゴ属】

[Stylophora pistillata Esper,1797]

(スティローフォラ・ピスティーラータ・エスパー,1797)

枝の一部が異常に膨れている事があります。これはサンゴヤドリガニが作った「カニこぶ」で、実は枝が籠状に丸く膨らんだ中に、サンゴヤドリガニが入っています。この「こぶ」は、ちょうど植物に昆虫が入り込んで出来る「虫こぶ」と同じようなもので、昆虫が植物に取り憑き植物がその部分を異常に成長させその結果、中に虫を包み込んだ「こぶ」が出来上がります。これが「虫こぶ」。

これはハナヤサイサンゴ科全体によく起こる現象なので、もう少し詳しく説明しておきます。サンゴヤドリガニの若くて小さな雌(メス)は、枝分かれしかけたサンゴの枝の間に取り憑きます。普通本科のサンゴは枝が二叉にしか分岐しません。所がサンゴヤドリガニに取り憑かれた部分は、ちょうど花びらのように短く薄べったい枝の芽を放射状に成長させ、この枝がチューリップの花の様に成長してカニを取り込みます。そうして最終的には上部に数mmの穴を残すだけで完全にカニを封じ込めた「カニこぶ」になります。

サンゴヤドリガニは、この「こぶ」から外に出る事は出来ず、その一生を「こぶ」の中で暮らすのです。ここで幾つかの疑問が浮かび上がります。先ず、餌はどうやって調達するのでしょう。カニは水流を起こしてそれに乗ってくる微細な粒子を食べていると考えられています。次に子孫を残す術についてはどうでしょう。「カニこぶ」を作るのは雌だけだと云いました。雄(オス)は成熟しても大変小さく自由生活を送ります。交尾の時にはこの「カニこぶ」の小さな穴を通って、雌の元に通ってくると考えられています。何とも不思議な生態ですね。他にもサンゴガニ・サンゴテッポウエビ・ダルマハゼが棲み、スズメダイ類の隠れ家として利用されている事が知られています。

*引用書籍「サンゴとサンゴ礁のはなし」本川達雄先生著(中公新書)

ハナヤサイサンゴ科の3種のサンゴ、ハナヤサイサンゴ・トゲサンゴ・ショウガサンゴは,多くの海域でプラヌラ幼生を一年のうちの長い期間、月に1回の頻度で産出すること,産出の期間は低緯度ほど長く,高緯度になるにつれて短くなることが知られています。本科は、自然界では容易に増えると同時に、非常に白化にも弱い事で有名です。事実、飼育難易度は高く、ミドリイシ科より忍耐力もありません。

それでも他のサンゴ科には無い、フワフワした何とも云えないポリプと枝形状は、独特の光沢感があり、海中でも飼育水槽でも一際目立ちます。飼育の難しさと、その美しさの両方を楽しむーそんな所が多くのアクアリストを魅了するのかもしれません。


=イシサンゴ目の造礁サンゴ系統樹(分類)=

生物 → 真核生物(しんかくせいぶつ)ドメイン → 動物界 → 刺胞動物(しほうどうぶつ)門 → 花虫(かちゅう)綱 → 六放(ろっぽう)サンゴ亜綱 → イシサンゴ目 →亜目から下位が下記の分類です。

【ムカシサンゴ亜目】

【ウネリサンゴ亜目】

【クサビライシ亜目】

【キクメイシ亜目】

【チョウジガイ亜目】

【ハマサンゴ亜目】

【キサンゴ亜目】

・・・と、ここまでが造礁サンゴの内、イシサンゴ目に属する種です。*はイシサンゴ目に属するものの非造礁サンゴ扱いのものですが、上記の系統樹は日本サンゴ礁学会さんが2000年に作成したもので、分子遺伝学的検討に基づく分類(2009年)とはまた微妙に相違点がありますが、今の所はーという事にしておいてください。


イシサンゴ目の造礁サンゴに続いて、造礁サンゴでありながら、イシサンゴ目以外のものも一部ありますので触れておきます。

=イシサンゴ目以外の造礁サンゴ系統樹(分類)=

生物 → 真核生物(しんかくせいぶつ)ドメイン →  動物界  →  刺胞動物(しほうどうぶつ)門 → 花虫(かちゅう)綱 → 八放(はっぽう)サンゴ亜綱 → 目から下位が下記の分類

【アオサンゴ目】

●【アオサンゴ科】 [Helloporidae](イーリュウポーリディ)
    76【アオサンゴ属】 [Heliopora](イーリュウポーラ)

【ウミヅタ目】

  ●【クダサンゴ科】 [Tubiporidea](トゥビポーリディ)
    77【クダサンゴ属】 [Tubipora](トゥビポーラ)

生物 → 真核生物(しんかくせいぶつ)ドメイン →  動物界  →  刺胞動物(しほうどうぶつ)門 → ヒドロ虫(ヒドロチュウ)綱 → 目から下位が下記の分類

【アナサンゴモドキ目】

  ●【アナサンゴモドキ科】 [Milleporidae](ミィレポーリディ)
    78【アナサンゴモドキ属】 [millepora](ミィレポーラ)

以上が現在、造礁サンゴ扱いとされている種の分類です。


更にイシサンゴ目でも無ければ造礁サンゴでも無い・・・じゃあナニ?って感じですが、大きな括りとしては「六放サンゴ亜綱」や「八放サンゴ亜綱」って云うくらいですから、サンゴはサンゴです。ご存知、表情豊かなソフトコーラルやイソギンチャクなどの仲間をご紹介します。

=イシサンゴ目以外の非造礁サンゴ(分類)=

生物 → 真核生物(しんかくせいぶつ)ドメイン →  動物界  →  刺胞動物門 → 花虫綱 → 六放サンゴ亜綱 → スナギンチャク目 → 亜目から下位が下記の分類

【短膜亜目】

  ●【Neozoanthidae科】[Neozoanthidae]

    【Neozoanthus(属)】[Neozoanthus]

  ●【イワスナギンチャク科】[Sphenopidae](スペノピディ)

    【イワスナギンチャク属】[Palythoa](ファリトゥー)
      ・タマイワスナジンチャク[Palythoa lesueuri Audouin]
      ・タチイワスナギンチャク[Palythoa yongei Carlgren,1937]
      ・イワスナギンチャク(パリトキシン猛毒を持つ)

  ●【スナギンチャク科】[Zoanthidae](ゾンティディ)

    【スナギンチャク属】[Zoanthus](ズァントゥス)
      ・キクメマメスナギンチャク[Zoanthus sansibaricus ]
      ・フジマメスナギンチャク[Zoanthus aff. vietnamensis]
      ・クロシオマメスナギンチャク[Zoanthus kuroshio]
      ・ブドウマメスナギンチャク[Zoanthus gigantus]

生物 → 真核生物(しんかくせいぶつ)ドメイン →  動物界  →  刺胞動物門 → 花虫綱 → 六放サンゴ亜綱 → イソギンチャク目 → 科から下位が下記の分類

◎【ウメボシイソギンチャク科】[Actiniidae](アークティニィデ)

  ●【Antheopsis(属)】[Antheopsis](アントゥプシース)
    ・キッカイソギンチャク[Antheopsis koseirensis sensu Uchida & Soyama, 2001]

◎【ハタゴイソギンチャク科】[Stichodactylidae](スティショーダクティーディ)

  ●【Stichodactyla(属)】[Stichodactyla](スティショーダクティラ)
    ・グビジンイソギンチャク[Stichodactyla tapetum (Hemprich & Ehrenberg in Ehrenberg,1834)]

◎【ケイトウイソギンチャク科】[Thalassianthidae](タラッスェンティディ)

  ●【Heterodactyla(属)】[Heterodactyla](エテロダクティーラ)
    ・ミノイソギンチャク[Heterodactyla hemprichii  Ehrenberg, 1834]

生物 → 真核生物(しんかくせいぶつ)ドメイン →  動物界  →  刺胞動物門 → 花虫綱 → 八放サンゴ亜綱 → ウミトサカ目 → 亜目から下位が下記の分類

【ウミトサカ亜目】

  ●【ウミトサカ科】[Alcyonacea](アルチョナチェア)

    【ウミキノコ属】[Sarcophyton](サルコーフィトゥーヌ)
        ・オオウミキノコ[Sarcophyton glaucum(Quoy&Gaimard,1833)]

  ●【ウミヅタ科】[Clavulariidae](ラボラリィデ)

    【ハナヅタ属】[Pachyclavularia](パキケルヴラーリア)
        ・ムラサキハナヅタ[Pachyclavularia violacea (Quoy & Gaimard)]

  ●【チヂミトサカ科】[Nephtheidae](ニフタィディ)

    【トゲトサカ属】[Dendronephthya](デンドロネフティーヤ)
         ・オオトゲトサカ[Dendronephthya gigantea(Verrill,1864) ]
          ・ビロードトゲトサカ[Dendronephthya habereri Kükenthal,1905]
         ・トゲトゲトサカ[Dendronephthya mucronata(Pütter,1900)]

    【ハナトサカ属】[Stereonephthya](ステレオネフティーヤ)
         ・キバナトサカ[Stereonephthya japonica Utinomi,1954]
         ・アカバナトサカ[Stereonephthya rubriflora Utinomi,1954]

  ●【ウミアザミ科】[Xeniidae](テッセニーディ)

    【ウミアザミ属】[Xenia](テッセーニア)
         ・ブルームウミアザミ[Xenia blumi Schenk,1896]

もう、お気づきの事かと思いますが、普段私たちがよく言う、ハードコーラルなのかソフトコーラルなのか、或いは好日性か陰日性などの分け方は、現在の所、生物学的な分類では「全く関係が無い」ようなのです。しかもイソギンチャク類だって「六放サンゴ亜綱」に入っちゃう。。不思議~ですよね。

納得行かない部分がいっぱいあると思うのですが、2011年7月に独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)のマリンゲノミックスユニットがコユビミドリイシの全ゲノムを解読したそうです。当時は「世界で初めてサンゴの全ゲノム解読に成功」と大きく報道されました。また、その2年後の2013年7月には褐虫藻のゲノム解読にも成功したとか。おおぉ!!

更に、同ユニットは2014年5月にはサンゴ礁を形成する上で最も代表的なミドリイシ属の個体を的確に識別出来るDNA解析の手法を編み出したそうで、今後サンゴの分類に於いて劇的に大幅な改定が見込まれるハズ!なので発表有り次第、サンゴ辞典でも追記したいと思っています。


それでは最後に、サンゴではないけれど、タンクメイトとして欠かせないサンゴ礁の住民たちを一部ご紹介します。

=その他の海棲生物(分類)=

生物 → 真核生物(しんかくせいぶつ)ドメイン →  動物界  →  環形動物門多毛綱目から下位が下記の分類

【ケヤリムシ目】

  ●【ケヤリムシ科】[Serpulidae](セルプリディ)

    【Sabella(属)】[Sabella](サベーラ)
      ・ホンケヤリムシ[Sabella fusca Grube]

    【Sabellastarte(属)】[Sabellastarte](サベーラスターテ)
      ・インドケヤリ[Sabellastarte sanctijosephi(Gravier)]

  ●【カンザシゴカイ科】[Serpulidae](セルプリディ)

    【イバラカンザシ属】[ Spirobranchus ](スペロブランチュース)
      ・イバラカンザシ[Spirobranchus giganteus (Pallas)]
      ・オオナガレハナカンザシ[Protula magnifica]