ウミガメの涙

海水中の塩分濃度はヒトの血液(体液)の塩分濃度の3倍程度ですが、魚類の血液(体液)の塩分濃度も陸上動物の血液(体液)の塩分濃度と大きな差はありません。すわなち、海水魚は自分の体液よりも濃い海水中で生活し、淡水魚は自分の体液よりも薄い淡水中で生活しています。

その為、浸透圧の仕組みで、海水魚は体液が外に抜け、淡水魚は周囲の水が体内に入り込みます。だから海水魚は大量の水を飲み、エラから塩分を排出します。逆に淡水魚は多量の尿を排出し、塩分は尿細管で回収します。

サケやウナギ、あるいはアユといった成長の段階で海水と淡水の生活の場を変える魚は、その際にごく短時間でこうした代謝の仕組みを変える事が出来る驚異のスーパー生物です。

海水中の塩分はヒトの血液(体液)よりも濃いので、ヒトが海水を飲むと血液(体液)の塩分濃度が高くなり、ますます喉が渇く事になります。しかし、海鳥やウミガメは海水を飲んで水分を補給する事が出来ます。これは一体どういう事なのでしょうか。

実は私たちヒトには持ち合わせていない、目と鼻の間にある[塩類腺](えんるいせん)という器官で、余分な塩分を排出しています。

そんな訳で、産卵の為に上陸したウミガメがあたかも産みの苦しみで涙を流している様に見えますが、実のところ「塩類腺から塩分を排出しているだけ」、というのが正解です。

日本では、1990年以降、ウミガメの産卵が60%も減っています。その一因として、砂浜の環境が変化してウミガメが産卵出来なくなってしまったり、網や釣り針にかかって死んでしまうなどが挙げられますが、本当のところはまだ分かっていません。

だからと言って、子ガメの放流会はウミガメにとって必ずしも良い事ではないかもしれない、という事が最近の研究で分かりました。

本来、子ガメは卵から孵化すると、砂浜から海へ向かいます。この時、体の中の磁石の向きをセットしているそうです。しかし、ヒトが卵を安全な所へ移動し、温めて孵化させ、手で海に放流すると、その磁石がセット出来ない、つまり正しい方向感覚を持てないのではないか、というのです。

これが事実なら、ヒトの手で子ガメを放流する事はウミガメにとって迷惑なのかもしれません。減少している原因も含めて、科学的に長い時間をかけて調べる事が必要だと云われています。

私の田舎は吐噶喇列島(トカラ)*の離島なのですが、昔はウミガメが泳ぎ、砂浜を歩く光景はよくある事でした。ところが、最近は殆ど見かけなくなってしまいました。
            *鹿児島県奄美大島の北に位置

当時の大人たちは「全て大陸からの密猟のせいだ」と話していましたが、今思えば、農薬も起因のひとつではないかと考えます。今住んでいる高知の海でも、たまに見かけるくらいです。高知の場合は、護岸工事などの影響も大きいと思います。しかし、津波被害の問題もありますから悩ましいところです。

ウミガメの保全活動推進を見聞きしますが、何故ウミガメに保全活動が必要なのか?

単に小ガメが可愛いからだけでなく、自然生態系にも多大に寄与(例えば、年間約500匹の産卵の内、大部分が卵の状態で食べられてしまう。でもそれはつまり、栄養が乏しい海岸植生にとって重要な栄養源の一つ)している事まで丁寧に説明出来たら、私たちは目指すべき道を見誤らないで済むのかもしれません。

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